声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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田中真弓の声優道

『天空の城ラピュタ』のパズー役、『DRAGON BALL』のクリリン役、そして『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィ役。日本人なら誰でも知っている名キャラクターの数々を演じてきた田中真弓さんに、声優になるまでの道のりをいろいろ訪ねてみた!

プロフィール

田中真弓 たなかまゆみ・・・1月15日生まれ。東京都出身。青二プロダクション。主な出演作は、アニメ『ONE PIECE』(モンキー・D・ルフィ)、『忍たま乱太郎』(きり丸)、『DRAGON BALL』(クリリン)、『ダッシュ勝平』(坂本勝平)、『うる星やつら』(藤波竜之介)、『中華一番』(マオ)、『ガイキング』(ツワブキ・ダイヤ)、『とっても! ラッキーマン』(ラッキーマン)、『魔神英雄伝ワタル』(戦部ワタル)、『天空の城ラピュタ』(パズー)ほか。

②とても幸せな声優人生を送っていると思います。

苦労を重ねた養成所時代に演技で
お金をもらう幸せを知った

 テアトル・エコーに入る前は、あちこちの酒場で歌を歌う仕事をしていました。1日4ステージ、30分歌って30分休んで、1週間休みなし。それを2軒掛け持ちしていたので、ヘトヘトでした。そんなときに、お客さんの中にエコーの人がいて、紹介してくれたんです。研究生になってからも、酒場では働いていました。「変ねえ、お客さんがこないわねえ」なんて言ってたら、入り口に「準備中」の札がかかりっぱなしになっているようなお店でした。ママが役者を育ててくれる人で、とにかくその日のお金はもらえたし、芝居なんかで長期休養を取っても許してもらえる、ありがたいところでしたね。エコーの研究生も、ずいぶん働いていました。

 声優デビューは『激走! ルーベンカイザー(※3)』の涼子役だったんですが、これはもう悲惨な思い出です。涼子は18歳の社長令嬢なんですが、私にぜんぜん合ってないじゃないですか(笑)。でも当時は自分の声が男の子に向く声だと思ってないから、気づかなかったんですよ。そしたら毎回とちって、嫌な顔をされて、残されて、あの頃は人が怖くてたまりませんでした。5円玉ハゲになるくらい。ほんとに人間関係も難しくて、苦難の時期でしたね。

 ただ、アルバイトをしなくてよくなっていくのは、うれしかったですね。演技することでお金をもらえるというのは、すごいことでした。でも、できれば映画やドラマに出たいと思ってましたね。そういう仕事はなかったですけど。ときどき『おはよう!こどもショー(※4)』っていう番組に出させてもらってました。再現フィルムですけどね。その後も、顔の出る仕事というと、再現フィルムでした。『マジカル頭脳パワー(※5)』とかにも出ていましたけど、楽しかったですね。ただ、再現フィルムは出たがらない役者もいるんですよ。“再現フィルムの役者”というイメージがついてしまうらしく、「仕事は欲しいけど再現には出ない」っていう人もいますね。そういえば、再現から出てってビッグになった人っているのかなぁ(笑)。

自分の目標を定めることが 力をつけるための第1歩

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 といっても、大事なのはそれだけではないんです。類型の演技でいいんだったら、安くて若い人を使ったほうがいいに決まってるじゃないですか。でもたとえば八奈見乗児(※6)さんなんかは、使うほうが八奈見さんじゃなくちゃ嫌だから、八奈見さんにお願いするわけですよね。やるんだったら、そこまでにならないと意味がないと思っています。声優としての訓練というのは、とくに受けたわけではないですね。ただ、声優の演技と芝居の演技は違います。声優の仕事には、類型が必要なんですよ。例えばおばあさんならば、おばあさんと誰にでも分かる演技ですよね。それが上手になるというのは、声優としてとても大事なことだと思います。

 でも若い頃って「自分はこんなにできる」って思いがちじゃないですか。さっきの類型の演技が上手になって、何でもできると思い込んじゃうんです。でも、何かのきっかけで「ああ、自分はこんなにできなかったのか……」って気づいて、そこから変わっていく人もいます。そうなると、もう一目瞭然。「あ、こいつ気づいたな」っていう瞬間があります。

 だから、興味がある子には愛情を持って、そういうことを言ってあげようと思うんですが、以前「真弓さんのおっしゃることはよく分かります。でも、そこまで声優っていう仕事にかじりついてるわけじゃないんです」って言われたことがあるんです。むしろ私のほうが気づかされちゃいましたよ。「あ、そうか! ごめん!」って(笑)。

 そういうふうにちゃんと見極めてるなら、それはそれでいいと思います。たとえば「若い頃しかできないから、結婚して子供ができるまで」って決めて、アイドル声優になってガンガン売れて、っていうのも、潔くて私はいいと思う。ただ、ずっと役者をやりたいんだったら、たくさん本を読んで、舞台を観て、映画を観たほうがいいですよね。

 人としても役者としても、個性を伸ばすというのはとても大事なことだと思います。個性を伸ばすには、人を愛すること以外にありません、声優は、人を愛する仕事。だから「こいつ嫌なやつだなあ」と思ったら、話してみるんです。「なんで嫌なんだろう」って考えながら。そういうことで見えてくる自分の姿も、またあるんです。そう気づいたら、人と向き合うのが楽しくなってしまいましたね。まあ、ほんとにダメな人はダメですけどね(笑)。

 人生もそろそろ締めくくりに入ってきているので(笑)、この先のことを、よく考えます。新橋演舞場とか明治座あたりで、アニメなんて見たことないようなおばちゃんとかに「なんか面白いのが出てきたねえ。ちっこいけどよく動くのが」って言われるような、おばあさん役者とかになりたいです。

 声優としては、とても幸せな人生を送っていると思います。『ONE PIECE』は『ドラゴンボール』を抜いて15年続いていますけど、作者の尾田(栄一郎)さんは「真弓さんが『代表作はルフィ』としか言えないくらい続ける」って言ってくれています。40歳を超えて、こういう役をもらえたというのは、とても幸せなことですよね。「これで声優辞めてもいいぞ!」という意気込みで、今後もルフィとつき合っていこうと思っています。

 

※3……東映製作のTVアニメ。77年から78年にテレビ朝日系列で放送された。本田技研工業や鈴鹿サーキットの協力を仰いで作られた本格的レースアニメ。

※4……65年から79年まで日本テレビ系列で放送されていた子供番組。土日版は一部ネット局で1980年9月まで継続した。

※5……90年から99年まで日本テレビ計rつで放送されていたクイズ・バラエティ番組。

※6……テレビ創世記から活躍する業界屈指の大ベテラン。声優としては、『巨人の星』の伴宙太、“タイムボカン”シリーズにおける『タイムボカン』のグロッキーや『ヤッターマン』のボヤッキーなどが代表的。そのユーモラスな演技は“八奈見節”と呼ばれる独特のセリフ回しで知られる。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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