声優道

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吉野裕行の声優道

元気な少年役からクールな青年役まで演じ分けるたしかな演技力で活躍中の声優・吉野裕行さん。歌やラジオ、イベントなどのお仕事でも多忙な日々を過ごしていますが、この世界に入る前の吉野さんはどんな青春時代を過ごしていたのでしょうか?

プロフィール

吉野裕行 
よしのひろゆき…2月6日生まれ。シグマ・セブン所属。
1996年に声優デビュー。2000年に『ヴァンドレッド』のヒビキ・トカイ役で初の主人公を演じる。以降、『機動戦士ガンダム00』(アレルヤ・ハプティズム/ハレルヤ)、『ヤッターマン』(ガンちゃん/ヤッターマン1号)、『結界師』(墨村良守)、『SKET DANCE』(藤崎佑助)など数々の人気作品に出演。2013年にはkiramuneレーベルよりアーティストデビューを果たした。

やりたいことのために活動の幅を広げていく

やりたいことのために活動の幅を広げていく

 僕は同世代の声優が多いんですよね。僕らの世代はとくに多い。その中でも僕は売れるまで……「売れる」って何をもって言うのか?とは思いますけど、ある程度の需要が増えるまで、時間がかかったなと思います。周りのみんなは主役とか、いい役をやっていて、たしかに「いい声だよな」「うまいな」と認めつつ「何がそんなに違うかな?」って、ずっと思っていました。そこからちょっとずつ主役をやらせてもらうようになって、でも、それが続いたかというと、そうでもなくて。とくに僕らの若い頃ってCDドラマがすごく多くて、そこで需要があったのが、いわゆる無色透明な主人公。声の質も、だんだん中性化していった。僕もオーディションを受けていたけど、どう考えても自分の声はそうじゃないなと思っていたし、同じところで勝負するのはバカらしいなと思うようになりました。なんで人と同じことをやらなきゃいけないんだろう? こんなに違う人間がいるんだから、きっと違う枠があるはずだと思って、そこを特化させたいと思うようになりました。

 「謎の新ユニットSTA☆MEN」を結成したのもその頃で、みんな「もっと売れたい」という思いがあったんです。だから自分たちで発信して、プロモーションすることを始めて。とはいえ、これはほかのメンバーが勝手に作ったユニットですからね。ユニット結成の話し合いが行われた現場に、僕はいなかったので。もともとは僕以外の全員が出ているドラマCDがあって、その収録後にみんなで飲んで盛り上がって、このメンバーで何かやろう、となったんです。そのときに鈴村(健一)が僕と櫻井(孝宏)くんの名前を出して、その場で電話してきて、僕はよくわからないまま「いいよ」と返事して。もしかしたら、その場にいたらネガティブなことを言っていたかもしれないです。「そんな簡単じゃねえだろ」とか。僕は「声優はあくまで声の仕事で、表に出ていくものじゃないだろ」って、ずっと思っていたから。それがこうしてユニット活動をやって、今ではソロで歌うことにもなったわけですから、わからないものだなと思います。ただ、STA☆MENをやって本当によかった。いろんなことを経験できたし、自分の考えだけでは見えてこないものがあるということが、とてもよくわかりました。結局、自分のやりたいことは声の仕事なんですよ。そのために、もっと何をどうしたらいいのかというのをSTA☆MENで学んだし、音楽を始めたのも、音楽が楽しくなったからというのもあるけど、ずっと声の仕事をしたいから始めたという部分も正直ありますね。

DMA-_K1_9382 こういう取材でいちばん聞かれて困る質問が「今まで演じてきたなかで印象に残るキャラクター」というもの。全部好きだもんなあ……。そのときそのときで助けられたりとか、新しいものを与えてもらったりというのがあるし、オーディションで「取りたい!」と思って取ったキャラもいれば、時間に追われるなかでボイスサンプルを出したら受かったものもあると思うし。正直、自分で代表作と思えるほどのものもあまりないなと思っていて。もちろん、いくつかわかりやすいものもありますよ。たとえば『ヤッターマン』とかは、僕の記憶に残っている最初に観たアニメのひとつだし、親に『ヤッターマン』の弁当箱とか上履き入れとか買ってもらっていたくらい大好きだったから、決まったときは本当にうれしかったことを今でも覚えています。その『ヤッターマン』にたどり着いたのも、いろいろな作品で生まれた人とのつながりがあったからこそなので、どれがどうという話ではないんですよね。だから、印象に残るキャラを選ぶのはすごく難しい。

 変わったキャラといえば、昨今だと『四畳半神話大系』の小津は取りたいなと思って受けた役。あの顔で、僕の中に聴こえる声はああいう声で、自分で言うのも変ですけど、これが正しいひとつの形ではないかという表現をさせてもらえたのが本当によかったです。でも、あの声の使いどころってほかの作品ではなかなかない。小津を演じたからといって、ほかの作品でも小津みたいな声が要求されるというわけではないんです。そこが僕の中で、いまだに不完全なところなんですよね。最近だと『機動戦士ガンダム00』のアレルヤ/ハレルヤを演じた影響なのか、若干乱暴なチンピラ色の強い役が増えたという印象があるかもしれませんが、それも決して定着しているものではなくて。……まあ、逆に固まってほしくない自分もいるんですけど。ヤッターマン1号と小津が同じであってほしくないですし、同じ声で演じたいと思わないし、結局はこの楽器(のど)を使っているから同じ声だとしても、やっぱり違う声にしたいなと思っていますね。

変化する時代を生きて今は自信をもっている

デビューから20年たって、そこそこ芝居に自信もついたけど、もっといいものを提供できる人たちはいっぱいいますからね。自分がどれだけ努力しても、先輩も同じだけ努力しているから、いつまでも追いつかないんです(笑)。でも、僕は若い頃に周りと同じことをやっていてもしょうがない、横と勝負していたら伸びないんだよということを感じて、その頃から「先輩を倒さないとダメだよね」という考え方でやっていました。その当時、僕が勝手にですけど「この人たちと戦っていくことになるのか……」と思ったのは、うえだゆうじさん。『ラブひな』でお会いしたときにそう思ったし、生意気にも「戦えるようになりたいんです」という話をうえださんに言ってしまった気がします。あとは僕が始めて主役をやらせてもらった『ヴァンドレッド』で出会った岩田光央さんですね。岩田さんはありがたいことに「今まで俺がこういう役をやってきたけど、おまえが出てきたのを見て、俺は次のステージに行かなきゃいけないと思った」とおっしゃってくれました。そういうふうに先輩が言ってくれるんだったら、もっと上の人と戦っていかなきゃいけないなと思いましたね。


DMA-_K1_9402 今では後輩も増えてきましたが、僕らの世代はみんな自信をもっていると思いますよ。とくにこの10年、20年って、短い時間のなかで声優業界がすごく変わったんじゃないかと思うんです。歌もそうだし、ラジオもそうだし、イベントとかも急激に増えていった時代で、それに対応しないと、もう声優じゃいられなくなるという。そのなかで若い頃からもがいてやってきているから、余程のことがなければみんな生き残るだろうと思います。
ただ、僕はやっぱり”声優”にこだわりたい。今はいろんなことができるけど、僕がいつも感じるのはアニメの作品とキャラクター、それを応援してくれる皆さんに支えられているということです。だからこそ、先輩たちがやってきたような、スキルを提供できるような声優でありたいという思いはずっと持ち続けています。

 これからの課題としては、自分のしっかりとした武器を作ること。声も含めて、与える芝居のイメージをひとつ作れてもいいのかなと思いますし、逆に作らずに、何でもできるくらいになれるのかどうか。あとは、生涯声優でいられるかどうか、です。おかげさまで歌を歌ったり、映像コンテンツをやらせてもらえたりするけど、どんな仕事をしても「声優だ」って言いたいですからね。その答えは死ぬまでもらえないということもわかっています。自分の評価は死んで完成するものだと思っているから、その間、どれだけ自分自身と戦い続けられるかでしょうね。

 

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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